1999年のいろいろ

2000/1/10

あまりに忙しくて、書いている暇がなかったのはあるけど、What’s Newとかいって、1年以上も変わらない(Last updateは1998/07/30とありました…) というのも、ひどい。去年(1999年)一年と最近のこと付け加えます。


ICCS’99
ICCS(International Conference of Cognitive Science)という学会の事務局のようなことを昨年の前半やっていました。Invited speakerとの連絡担当ということで、けっこう神経を使いました。会期中はひどい頭痛に悩まされていました。論文、3つとカテゴリーについての今井むつみさんが企画したsymposiumのdiscussantを担当して、へとへとになりました。discussantというのは日本語でもやったことがないので、これは大変でした。なんか、いろんな発表をちゃんとまとめるみたいな仕事になってしまいましたが、「あれでわかった」と何人かのかたからほめられました。一方、「なんであんなお行儀良くやったの?」という人もいて、確かにそうだなあと思いました。

博士論文
1999年は博士論文の年でした。まだ続いていますが、もう書くことはないのでだいぶ気が楽になりました。本当に大変なんですね。

* 数百枚の原稿の論旨を一貫させる。
* 言い過ぎない。
* しかし、あまりにせせこましくない。
* 専門性を強調する。

書いたものも本当に難しくて、自分で読んでもすぐには理解できない部分もあります。こうした作業は、体力、気力が十分なときにやるものです。

大学院
1999年度から、大学院を担当することになりました。以前は、助教授(ふぜい?)には大学院の講義を持たせないというのが我が学科の方針でしたが、まあ、今年から助教授も持つようにとのことでしたので、ありがたく引き受けさせていただきました。久しぶり楽しかったですね(東工大にいたときは、教授の代わりにゼミをやっていましたので、6年ぶりかな)。

受講生が一人(しかも他学科)ということでしたが、いろいろ集まってきて、結局 5人ほどで

* P. Thagard “Mind Readings” MIT.

を読みました。むろん、読心術の本ではありません。そもそもThagard(下にでてくる「アナロジーの力」の翻訳者です)は、 “Mind(MIT)”という教科書を出版していて(翻訳は松原さんがやっていて「マインド」 (共立出版)です)、これのAdvanced Readingsという意味合いを持つのが、上記の本です。いろいろとおもしろかったのですが、特に印象に残ったのが、第1章のH. A. Simon(あのサイモンです)の次のくだりです(元論文は、1992年です)。

By any reasonable metric, we know more about the human mind and brain than geophysicists know about the plate tectonics, far more than particle physicists know about elementary particles, or biologists about the processes that transform an fertilized egg into a complex multicellular organism.

訳:(妥当な尺度を使う限り、認知科学者が人間の心と脳について知っていることは、地球物理学者がプレートテクトニクスについて知っていることよりも多いし、粒子物理学者が基本的粒子について知っていることより、また受精卵から複雑な多細胞生物に変化するプロセスについて生物学者が知っていることよりも、はるかに多い。)

これの真偽を確かめる能力は私にはありませんが、認知科学をやっているものとして元気が出る一言です。

あとは、Durfeeという人の書いた、(これも古いのですが)multiagentについての論文もおもしろかった。「作る」、「設計する」という視点から、人間をとらえ直すことの強みをまた久しぶり実感しました。こんなロジックです。

1. 人間みたいなの作りたいなぁ
2. 人間て何やってるの?
3. こんなことやってる。
4. こんなこと実現しよう。
5. そのモデルはこれ!
6. モデル実現には何をやればいい?
7. こんな技術が使える(あるいは今の技術じゃだめだから、この技術を開発しよう)。

出来上がりが人間かどうか、人間のモデルとなるかどうかはわからないけど。シンプルでいいですよね。皮肉ではありません。こういう精神を心理学者も持つべきだと、強く思う。調べてばっかりじゃ、意味がない。

人工知能学会
1999年の6月にはじめて、人工知能学会で発表しました(だいぶ前から、会員でしたがずっと賛助会員(会費だけを納める会員という意味)でした)。そのセッションは、「リアリティ」と「インタフェース」の問題を扱った発表をまとめたものでした。

私の発表を簡単にまとめると、

* いわゆる人間そっくりな顔や声をインタフェースに用いたからといって、別に人間が機械と付き合いやすくなることはない
* こういうエージェントは擬人化を狙っているという意味において、アナロジーである、
* よってアナロジーの原理にしたがった擬人化をしましょう、

というものでした。

CG,VR技術などを駆使してエージェントをつくろうと一生懸命になっている人が多いところでの発表でしたので、発表後ちょっと過激だったかなとも思いました。

ところが、その数ヵ月後に「ベストプレゼンテーション賞」というものをいただくことになりました。受賞理由は、「OHPを適切に使った」とかいうものでしたが、まさか人工知能学会でOHPを上手に使った程度で賞をもらうはずはない、きっと内容が良かったに決まっていると勝手に解釈して喜ぶとともに、この学会は度量の広い人たちが多いなぁと感心してしまいました。

詳しくは、ここをごらんください。


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