教育心理学会04:実践と研究

2004/10/12

教育心理学会の大会に出席するために富山に出張していました。いつも何らかの形でデータを出し、それを世に問うという姿勢を持った現役の研究者であろうと思い、そんな気持ちで毎年何らかの発表をしています。

昨年、一昨年と出席していると「うーん、違う」という気がしてなりませんでした。というのは、「実践」というムードが高まってきて、認知科学者であるわたしにはとうてい興味が持てない内容が目白押しだったからです。


現場、実践が大事だという思いは昔から強くあります。ただ、それは認識の現場であり、理論やモデルがまだとらえきれていない豊かな現実を持っているからです。つまり、認識の理論を作り出すリソースとして大事だと言うことです。しかし、わたしが見る限りでは(というか、他の人もいろいろと賛同してくれるのですが)、現場での実践に近い実験をやったというレベルを超えるものはとても少なく、大事な認知過程自体についての知見がまるでない研究がとても多いのです。というか、そもそもそういうものを無視して、現実的な効用のレベルで話が進んでいるわけです。

こういう人たちに質問などをすると、「認知過程が分からなくても、現場に役立つ」とか、「とりあえずやってみることの価値はある」などという、答えが帰ってきます。しかし、これは自分の不勉強、努力不足、科学者としての誇りのなさ(あるいは無自覚)を、現場、実践という言葉で糊塗しようというものです。つまり、これは実は現場を何も考えていない答えだと思いますね、はい。

認知のレベルで、つまり「なぜ」のレベルで話が分からないのならば、それは結局科学的に無価値だし、現場に持って行っても単なる応用にとどまってしまう。現場を応用の場と考えてしまったら、科学は絶対に発展しないし、現場も決して豊かにならないと信じています。

ということで気分重く、(できれば台風で飛行機飛ばなければいいなぁなどと思いながら)富山に行ってきました。しかし予想に反して、おもしろい研究が数多くあり、いろいろと勉強してきました。また、富山でうまい魚をたらふく食べてきて、かなり満足度が高い学会でした。いろいろ報告したいこともあるけど、今日はとりあえずここまで。


1件のコメント

  1. 綺麗山 より:

    教育心理学と認知心理学の視点が違うというのは自分もよく感じます。目的が違うので、お互いの研究で応用できるところを協力しあえれば良いな、と思います。
    ブログで認知心理の研究に関する記事をもっと読めると嬉しいです。

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