「知能」、「知能の謎」について

2005/1/5

冬休み前後に2冊の本をいただいた。
・けいはんな社会的知能発生学研究会「知能の謎」(ブルーバックス)←(たぶん)開さんから
・ディアリ「知能」(岩波)←繁桝先生から

これについてちょっとだけ。


「知能の謎」は大変にexcitingな本だった。著者は日本のロボティクス先導者である
浅田さん(阪大)
銅谷さん(ATR)
谷さん(理研)
茂木さん(Sony)
開さん(東大)
中島さん(はこだて未来大学長、この写真には驚いた。必見)
石黒さん(阪大)
たちで、他にもあの「パラサイト・イブ」の瀬名さん、國吉さん(東大)などの豪華執筆陣。

ポイントは生まれて間もない「認知発達ロボティクス」、および「構成論」の動向(これについてはいろいろ考えたのでまた別エントリーで)、意義、これからの課題などが書かれていてるということ。随所にすごい指摘があり、けっこう赤線を引いた。キーワードだけ並べると、

・システム論(貧困な局在論を越える)
・環境デザイン(認知主体だけでなく、その環境も含めたデザイン、starting-with-small原理)
・大脳基底核(強化学習の鍵)
・上位と下位(その相互作用、および自律性)
・開放力学系、コヒーレント相と非コヒーレント相の交代(これはスキル学習に直接利用可能)
・志向性とクオリア(これは上位-下位の話に含まれるな)

となる。いずれも難問だし、チャレンジのしがいがあるトピックだ。

一方「知能」。もらっておいて言うのも何だが、これは正直、落胆による驚きでした。いわゆる差異心理学のまんまですね。双生児研究で遺伝決定率が云々という話。こういう心理学が今でもあるんだという驚きですね。何を測っているかが分からないのに、WISCとかWAISとかで測っているものを知能と勝手に定義して、これまたよくわからない遺伝の寄与が何パーセントとか言う話です。著者は慎重にこの結果を扱っている部分もあるのだが、焼け石に水と言うところか。ひどいたとえかもしれないけど、星を観察して、見た目で直径6mmだとして、そこから「あそこに光る星は直径6mmの白い円だ」というようなものか。測定方法がいかに洗練されても、科学とは所詮無縁なものでしょう。

この本は岩波が出している「一冊で分かる」というシリーズの本なのだが、いくら何でもまずいでしょう。知能はとても多様(ガードナーの多重知能、スターンバーグのtriarchic theoryなど)だというのが、今日的見解で、この本に納得できる認知心理学者はほとんどいないのでは?また知能検査ではかれるような知能についてもずいぶんと昔ですが、ちゃんとした研究があります。よって書名は「知能検査」でしょう。どう考えても「知能」にはならない。

救いは、繁桝先生の解説ですね。これはとてもいいですというか、ここだけ読むとよい。


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