状況依存の、創発的学習者としての金魚

2005/1/14

うちは前からよく金魚を飼う。長生きしても2年くらいなのと、娘が金魚すくいファンなのでけっこう入れ替わり立ち替わりさまざまな金魚がいることになります。

ところが、数ヶ月前に7,8匹いたのが全滅した。そこで2匹ほど買ってきました。以前の金魚は、だいたい買ってきてから数日くらいたつとえさをもらえる状況を察して、わたしが水槽に近づくだけで、縁に依ってきて口をぱくぱくあけて、「くれー、くれー」という感じでした。

ところが


今回の金魚は数ヶ月たってもこうした行動がさっぱり見えず、えさをやってもほとんど寄ってこなかった。やっと、ここ1週間くらいで理解したようで(つまり学習に要したのは数ヶ月以上)、えさの瓶を振りふりするとそこに近づいてくるようになった。

で、なんでそうなのかということを妻と議論していた。
1.馬鹿な、あるいは臆病な金魚である、
2.観察すべき古参者(つまり前からいる金魚)がいなかった、
などが理由ではないかとまず考えた。

1はいいとして、2は若干の説明が必要かな。今まで新参金魚が単独と言うことはなく、必ず先輩がいて、「くれーくれー」をやっていた。これをみて学んで、つまり観察による学習をして、自分も「くれーくれー」をやるようになっていた。しかし今回は先輩がいないので観察できず、それで学習が遅れたというもの。これは一見もっともらしいが、こんな高級な学習をするんだろうか。ミラーニューロンみたいな話だよね。金魚にあるのかな、そんなの。

でも気に入った(正しい保証はないが)答えは、次のようなもの。金魚には複数匹の仲間が同じ行動を取るとそれをまねてその方向に行く傾向がある(とする)。新参金魚は古参金魚がそうしたことを行うので、このプログラムが働き、追いかけた。すると、餌が来た。餌が来れば口パクだ。

つまり、餌を求めるのではなく、単に仲間を追いかけるプログラムと、餌が来たら口パクをやるプログラムがあれば、「くれーくれー」ができてしまうというもの。大事なことは、
・高級な学習プログラムが必要ないこと、
・この学習は他者(魚)の存在が前提になっている
ということ。

これって状況的学習じゃないのかな?まあ、穴だらけの説明だけど、受けそうなので講義で使おう。

まあ、当然自分で強化学習を行うプログラムは持っているし、それ使っていると思う。でないと、今回の金魚が学習したことを説明できないから。ただ、近寄る映像、あるいはそれによる振動というのはそんなに条件刺激としていいものではないのも確か(つまり近づいても餌をあげないときの方がはるかにおおいからね)。だから単独の学習の場合は時間がかかるんじゃないかな。

ちなみにこれを調べていたら、金魚の視力は0.05などという記事をみっけた。


4 件のコメント

  1. 大西 より:

    そう言う説明はありと思います。
    これって、P.Pfeiferにinspireされたってやつですか?
    私は、V.Braitenbergの「模型は心を持ちうるか」を思い出しましたが。

  2. 大西 より:

    余談ですが、このタイトルは猛烈にうたれました。

  3. HS より:

    まさにそうですね。Pfeiferの感覚ー運動協応やsituatednessの話に通じるなぁと思いながら書いてましたね。ちなみにBreitenberg vehicleもまさにそうで、Pfeiferの本にも感覚運動協応の話としてかなり詳しい解説がありましたよね。

  4. SUZUKI, S. V. より:

    ちなみに最近Karen Pryorの『うまくやるための強化の原理』という
    動物のしつけに関する本を読んだのですが,その中で
    イルカは他のイルカと互いに行動を模倣する傾向が強いので
    他のイルカの芸を見るだけで芸に必要な動きを学習してしまう,という水族館員の話が出ています.
    あくまでエピソードとして語っているだけなので誇張がいくらかあると思いますが,
    ほかの水生動物にも同様の行動がみられるらしい,ということで.