精神分析が生み出す安っぽい物語

2005/3/1

風邪をひいていて寝込んでいたので、読もうと思って読んでいなかった「東電OL殺人事件」(佐野眞一)を読んだ。事件は有名で、1997年に東京電力のエリート(?)女性社員が、長年にわたり夜は渋谷で売春婦をして、殺害されるというもの。詳しい解説はこちらあたりを。またこの事件は冤罪の可能性が極めて高いことでも有名です。


期待して読んだのですが、はっきり言って失望。どうも著者は、被害者の内面に迫ることと、冤罪を追求することの二股をかけており、その結果(かなり長いものであるにもかかわらず)どちらもつっこみが不足していると思う。また何というか、演歌調というのか、妙にこぶしをきかせた文体もつらい。

特に残念なのは、被害者の内面に迫ろうとした部分で、精神分析をそのまま援用したところだなぁ。父親に溺愛され、自分もまた父を深く尊敬した。しかし、そのことにより母親との葛藤が生じる。ところがその父親が死んでしまう。父親と同じ会社で働き、彼に近づこうと努力するが、それは困難であることが分かってくる。すると、自分がどんどん惨めなもの、情けないもの、汚れたもののように思えてくる。それで売春に走る。というような分析をしている。

これじゃ三文小説だ。人間はこんなに分かりやすいものなんだろうか。


戯れ言 ]

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