日本神経科学会シンポジウム

2005/8/9

7月下旬に横浜パシフィコという豪華な会議施設で開催された、神経科学会大会に参加しました。私は、入来さん(理研)が主催した「概念の発達と操作の神経メカニズム」というワークショップでした。物質を扱う研究者が90%以上という学会なので、そもそも人が来るのか、また来たとして話をわかってもらえるのかなどという不安がかなりありました。しかしそこは入来さんということで、間違いなく100名以上の参加者がいて、議論もある程度まで活発に行われました。


ちなみに日本の学会で、参加者も99%まで日本人ですが、シンポジウムは英語でやるとのことで、かなり緊張しましたね。

他の発表者は

谷さん(理研)</a.
國吉さん(東大)
というロボットの方たちと、
・藤井さん(理研)
・坂井さん(東大)
という各々電気生理、イメージングを用いた神経科学者でした。

最初のお二人は今年の初めにソニーでインテリジェンスダイナミクスというシンポジウムで聞いたものをベースにしたものでした。そういう意味である程度は分かっていたつもりでしたが、もう一度聞いて、またその後食事を一緒にし議論する中でずいぶんと理解が深まりました。お二人とも作り込みを最小限に抑えて、場と相互作用する中で、行為、認知が成立するという研究を話されました。

國吉さんは起きあがりロボットで有名ですが、これも新聞で見たときはだから何みたいな感想を持ったけど、いや非常におもしろい研究であることがわかった。特に起きあがるという、めちゃめちゃに自由度の高いタスクの各段階における、身体各部位の分散を分析し、これが集約される部分とそうでない部分というのがあること、これを人間の目で見つけさせると言うところにかなりグッと来ましたね。多様性と安定のバランスのようなものを考えねばならないことがここからわかる。また、人の目というのはよくできたもので、膨大な自由度の中から関連する指標を即座に見つけ出す。こいつもすごいね。

もう1つとてもおもしろかったのが、藤井さんのお話しで前頭前野が何をするところなのかをかなりダイレクトに議論していました。彼によると、前頭前野(PFC)は
・抽象化
・事象のセグメンテーションと構造化
・学習
・予測
を行うという神経生理学的な証拠があるそうで、そこからPFCは

将来発生する事象の系列の確率を抽象化して表象している

という、まことに大胆だがグッと来る仮説を披露した。いわゆる学習と抽象化機能付きのベイジアンネットのようなものを作り出しているということだろうか。こうした話は、近刊の「予想脳」という本で皆さんも読むことが出来るようです。楽しみにして待ちましょう。

私は「認知の創発的性質」の中で書いた冗長性と重奏性の話を発達の文脈でしてきました。これはまた別エントリーで。ただ他の講演者が概念、あるいはもっとプリミティブな表象がどう形成されるかということをやっていたのに対して、私のこの話は概念がどう用いられるかということで、あまりうまくかみ合っていなかったような気がした、というかかみ合ってなかったな。


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