身体知研究会に参加

2005/9/29

9/28にSFCの古川先生を代表とし、諏訪さん(中京)藤波さん(JAIST)などがメンバーの研究会に参加させてもらった。場所は、JAISTの東京キャンパスというので、東京駅大丸の9階にでかけてきた(かなり不思議な場所だった)。


最初の古川先生の話を簡単にまとめると、従来のAIは言語化しやすい、意識化しやすい、比較的簡単に対象化できる知識を扱ってきた。しかし、ワザ、スキル、芸、などは、従来の知識とは対極にあり、言語化、意識化が難しく、対象として取り上げにくい(そもそもそれを実践している人間自体が、その知識自体をよく捉えていない)。そしてこれらの知識は人間の最も優れた文化的、社会的活動と密接に関係している(芸術、スポーツ)。これらの知識を明確にすることで、人間の理解を深めること、工学、教育に知見を応用することなどが可能になる。

発表はSFCの五十嵐さん、古川先生、橋詰先生(阪大)の3人であった。五十嵐さんはフーガなどで用いられる対位法の作曲を、マルコフチェインと確率的制約論理を用いた仕組みで解明できる可能性について話した。

古川先生は、演技全般を表現するための記述系を作り出すという、まことに壮大な話をされた。詳しい話は出来ないが、
・演技譜
・演技ルール
・演技状態系列
・調節動作
・動作一貫性制約
という5つの主要要素からなるものによって、あらゆる人(初心者、プロ)のあらゆる演技(現状ではチェロの運弓)を表現しようという話だ。個人的に興味を持ったのは、調節動作、動作一貫性制約だ。これらはあるアクションと別のアクションとの関係の調整を行う部分で、ここの記述系が明確になれば、非常におもしろいのではないかと思った。

最後の橋詰先生はゲストスピーカーで、運動科学の立場から、ダイナミカルシステム、生態心理学、身体性認知科学のコアな主張を豊富な実例をもとにして講演をされた。イチロー、宮里藍、S選手(これは名前を出さない方がいいらしい)、など、有名なトッププロの逸話が豊富で、ひたすらおもしろかった。

この研究会を通して感じたことは、暗黙知、コツ、ワザ、などといわれ、神秘化されたものに徐々に、しかししっかりとした形でアプローチする人がさまざまな領域にいる、あるいは育ちつつあると言うことだ。

我々も単純なスキルの学習過程をかなり長期にわたって分析し、熟達の過程で獲得される微妙な知識や調整などについてその蓄積もかなり出てきた。これらの知見と一致する見解や、それを理論的サポートする地盤も出来てきた。ちなみに10月後半には高等研で、こうした研究会がまた開かれる。また今回の科研費のことでいろいろと調べていたら、「移動知」なる研究会も同様の主旨で開かれているようだ。単なるモバイルかと思ったら、全然そうではない。

そろそろスキル科学の時代になるんじゃないかな。


1件のコメント

  1. kinjoblog より:

    スキルサイエンス②

    「スキルサイエンス」の研究会が先日あった。
    古川康一先生が、演技表現言語の話。
    五十嵐さんは、PRISMを用いた制約付きのマルコフ連鎖で作曲。
    阪大の橋詰…