大人の心の理論

2006/3/17

大人養成講座」という本を買った。これはなかなかおもしろい。まあ、要するに大人のたしなみというか、常識をおもしろおかしく語ったものだ。どういう風におもしろいかというと、これはまさに大人の「心の理論」だからだ。ああ、あとひさうちみちおの絵は昔から好きなんだよね。


会社の同僚が髪型を新しくしたとする、この場合どのような反応をすべきか、をとりあげる。私はそれが似合っていようと、似合わなかろうと、「おっ、失恋か?」などという冷やかしくらいしか思い浮かばない(まあ、さすがにいいとは考えていないが)。その本によると、これは最低のオヤジ反応であるそうで、やらないようにしましょうということだ。

ではなにも言わないのがいいのかというとそうではないらしい。髪型を変えて、いいのか悪いのか、自分でも判断がつかなくなり、大きな不安に苛まれている人に無言は、まともな大人のやることではない、というのがその本の教えだ。

ではどう言えばいいのか。むろん、すてきだったら、すてきだ、似合う、などを言えばいいわけですね。ただしその場合も「いやぁ、それ似合いますね」はまずく、「そういう髪型も似合うんですね」と言わねばならない(むろんこのとき「」に非常に強いアクセントをつける)。

しかし微妙な場合はどうするか、その本のおすすめは「雰囲気増しましたねぇ」とある。これはオレ的には余りよく分からない。自分がそう言われたとき、「はぁ?」のような感じだね。しかし、妻や娘に聞くと、そう言われれば悪い気はしない、と言う。納得しないだけ、価値があるような気がしてくる。

ああ、ちょっとずれるけど、昔男女兼用の床屋(っていうか、カットハウスとか言うの?)にいってたときに、そこのマスターから聞いた話で男の客には「前と同じにしておきました」と無変化であることを言えばいいのに対して、女の客には「ちょっと前髪にボリュームを出しておきました」というような変化を強調する言い方が喜ばれるとのこと。

話を元に戻すと、ほめる場合には、単に髪型をほめるのではなく、「小顔だから似合うんですよね」とか、「そのジャケットの色にバッチリじゃないですか」などを加えるとなおよいらしい。これは分るな。

他にもいろいろとおもしろい話が出ているのだが、こういうのを見るとやはり大人の心の理論は信念と欲求だけではまずかろうと言うことだ。なんで髪型変えたんだという問題に対して、髪型変えたいと欲したからとか、床屋がやってくれると信じていたとか、そういうのは笑い話のレベルだろう。自尊心とか、性格特性(これはやっている人がいる)、自己認識とか、所属集団におけるその人のニッチとか、そうしたものが入ってこないと、他者の行動や心理を説明、予測するということにはまったく届かないと思う。つまり、大人の心の理論というのはこういう資源を重奏的に活用したものとなっているということだ。これは十分にダイナミカル的研究の価値有りだよな。

またこういうのをやるとやはり男女差というのはきわめてでかいと思う。そして両性の間では、人の行動の予測、説明に用いる資源=オントロジー、またその用い方=因果律に体系的な違いがあるような気がしてくる。上の本にも書いてあったけど、オレのオントロジーと因果律では、女性がなぜ手編みのマフラーやセータを送るのかはを説明するのは困難だ。


戯れ言 ]

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