長期にわたる練習の生み出すもの

2006/5/28

ここではあまり書いたことはないが、ここ5年ほどレゴブロックを用いて簡単な物体の制作させ、その過程を分析している。7個ほどのブロックをつなげて飛行機のような形のものを作ることが課題だ。大人がやれば簡単至極で何のこともない。これを分析してどうするのかと言われそうだが、ポイントはその回数にある。1日一時間ずつ12日間かけて計2500回近くこの作業をやってもらったのである。


なんでこういうことをやったかと言えば、5,6年、いやもうちょっと前かも知れないが、中京大学の木村泉先生が折り紙を10万回のオーダーで作り、その変化の過程を分析した研究を認知科学会で聞いたからだ。これは衝撃的におもしろい話で、何とか自分の研究室でもそうしたことが出来ないかと思っていた。こういうことにおもしろさを感じてくれる学生がたまたまいて(second authorの人です)、これでゴーということになった。彼女の猛烈な努力によって、めちゃめちゃにおもしろい現象がいくつも観察された。

一般に、こうした単純な作業の熟達は練習のべき乗法則(power law)に従うとされている。練習回数の対数を横軸に、達成時間の対数を縦軸にとると、ほぼ直線で近似できることが知られている。これの意味するところは、
・初めのうちは急激にタイムが減少する、
・回数を重ねるに従って、減少のスピードはどんどん遅くなる、
・しかしいつまで経っても必ず減少し続ける、
というものだ。

これは一次近似と言うことでけっこうなのだが、実際に細かくデータを見ると、逆U字型カーブ(一度遅くなったあとにまた速くなる)とか、N字型カーブ(一度遅くなったあとにまた速くなり、そこからまた少し遅くなって安定する)などの、興味深いパターンが頻出する。

こうしたデータは一人から得られたものなので、たまたまそうだったという可能性は否定できない。ただ、興味深いのはこうした特徴的なカーブを描く時には、これと呼応するかのように行動上の変化が見られる。もっともおもしろいのは、2つの対立する組み立て方が拮抗するような場面においてUとかNとかが見られるというものだ。
つまり過渡期には複数の資源の拮抗による揺らぎが生じており、これが次の段階への飛躍をもたらすというわけだ。大事なことは、次の段階に行くはるかに前から(スランプ時期から)、新しい資源が活動を始めているということになる。

こういう考えに従うと、
・スランプというのは新しい資源の介入により、全体のバランスが壊れることから生み出され、
・スランプからの脱出というのは新しい資源をうまく使うために他の資源の調整が行われたことによる、
ということになる。

こうしたことを今年の認知科学会で発表してくる。原稿が出来ているので、下に貼り付けておこう。

認知科学会発表論文2006 1ページ目
認知科学会発表論文2006 2ページ目

(なんかMacでPDF出力するとページごとに分かれてしまうので)


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