伝統と創造の会

2006/8/26

今朝新聞を読んでいたら、自民党の1年生議員(小泉チルドレンと呼ばれる)80名の半数近くが、表題の会に参加しているという。で、この会は自民党で伝統とか言うわけだから、まあ想像できるけど、非常に一面的な見方と、卑怯なフレーミングで、とんでもない思想を広めようとしている。

この会の会長の稲田という議員は、首相の靖国神社参拝を批判する勢力に対して、「忘恩の徒」というレッテルを貼り、道徳、教育を語る資格なしと断罪する。あきれ果てる。


ここにこの会の設立と会長就任に際して、この人が言ったことが載っている。挨拶であって、論文ではないのだから、厳密でないのは当然だが、それにしてもひどい。

まず「日本人の心」というのが2000年かけて培われてきたものだそうだが、これがどんなものかが全く語られていない。具体的に語れば、それが本当日本が2000年かけて気づいてきたものなのかどうかははっきり決着がつくはずだ。そうであれば、たとえばそれが単に江戸時代あたりの武家社会の一部でのみ広がったものだとか、明治維新以降の国家主義の中で作られた幻想だとか、そういう批判が出来るはずなのだが、そこの中身について何も言わず、ここを曖昧にしたまま、いろいろな提案をする。そして連中の意見に反対する人間には、非国民、忘恩の徒などという、きわめて感情的な言葉を投げつける。これは、国家主義者たちが使うきわめて卑怯な手口だ。

また祖国を大事にするとか、道義だとか言っているけど、これは少なくとも近代国家というものが出来て以来、たいていの国で大事にされているものであり、ことさら日本の精神とか言うような話ではないはずだ。

経済的豊かさに埋没し、道義を忘れたとあるが、具体的にどういう事象をもってその該当例とするのかが、明示されていない。嫌みを言わせてもらえば、自民党が経済優先でひたすら走り、その背後ではロッキード、昭和電工疑獄、造船疑獄、最近では日歯連、水谷建設など、自民党、内閣トップが起訴される、さまざまな醜態をさらしてきたわけですよね。こういう会派の人間に、道徳とか、精神とか説教されるのは、どうも納得がいきませんね。泥棒に戸締まりの注意をされるような気分だ。

靖国参拝に関することでも、意味不明なことが多い。「道義」を大切にするという人たちが、他国の市民を多数虐殺し、日本人300万人を死に至らしめた責任を負うべき人間たちがまつられている場所に、国の代表が参拝しろと叫ぶのはなんとも理解を超える。国を不幸のどん底に陥れ、周辺諸国から憎悪される原因を作った人たちを愛国の精神でまつり、敬えというのは、「愛国」という前提を置いた上でも、理性の範囲外にある選択だ。

それにしても謎なのは、おそらく平均年齢で言えば、オレと同じくらいの人間のかなりの数がこうした無謀な組織に入会すると言うことだ。統一協会、国際勝共連合との関係が噂される、国を愛する心を国が教えるべきだとする次期首相有力候補もこの世代に近い。感覚的には、オレのまわりにはこういう考え方をする同世代の人間はほとんどいないような気がする。これは自分が認知科学などという、のんびりした仕事をしているからなのだろうか。


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1件のコメント

  1. Hi-Low-Mix より:

    近代日本という枠組みを肯定している以上、愛国心なり靖国参拝なりも私は肯定します。
    ただおっしゃるとおり、それを「伝統」とするのは納得しかねますね。そうやってドグマ化し、反論を封じ込めてしまうとひどく一面的な認識に陥りがちです。これは国のレベルだけの話ではなく、身近でもずいぶん見かけるパターンのように思えます。

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