力覚ディスプレイというものを通した超ダイナミカル宣言

2006/9/1

今日、メディア教育開発センターの大西君のところで、彼が長年にわたって研究している力覚ディスプレイというものを初めて見た。彼は自分のBlogでこれについて再三書いているのだが、はっきり言ってどういうものなのかがさっぱりわからなかったので、なんともコメントのしようがなかった。ところが、見ていろいろわかったのと、それに遅延を加えた実験の結果を見て、仰け反った。これはうまくいくとスンゴイ話になるよ。


まあ、不正確を承知で適当に説明してみる(大西君が写真入りとかで解説してくれるといいんだけどと思ったら,メーカーに写真があった.)。要するにコンピュータの中にバネをソフトウェア的に仕込んで、その効果を変な棒のようなものに伝達するという話だ。すると,操作者が棒を押し込んだりすると,この棒を通してバネの反発とかが伝わるというわけだ.,こういうことができるというのもおもしろいのだが、基本的にバネの動作を決めるはソフトウェアと言うことで、現実にはあり得ないような、いろいろなことができる。むろんバネというのは大西君の実験で使っている話であり,仕込むものはバネである必要はない.人体とかでもいいわけだ(これで手術のシミュレーションなんかがこれでできるわけね).

ちなみに大西君の実験ではディスプレイは使わないのだが,ディスプレイ上の物体をこの棒のようなものでなぞったり,することができるわけです.そしてディスプレイ上の物体の物理的なモデルをうまく乗せると,滑らかなところを棒でなぞるとすいすいなぞれて,ガサガサしたところをなぞると棒からガサガサ感が伝わってくるということもできるわけですね.

もっともグッと来たのは、バネの動作を被験者が押した瞬間からある程度遅延させるという実験の結果だった。つまりふつうバネを押せば押したとたん反発が来るわけだが、これを10msから100ms程度遅らせる。さて、そういうことを行えば当然はじめは何の感覚もないのに、途中から突然バネっぽい反発が来るような気がする。ところがこの予想は全く外れる。はじめからバネが反発していたかのように感じるのだ。

おもしろいでしょ。何にもないのに勝手にバネを感じるということですよ。このおもしろさをもうちょい詳しく語ると、次のようになる。たとえば50msの遅れでバネの反発が働くと考えてみましょう。こうしたことにもかかわらず、はじめから私たちはバネの反発を感じてしまうわけですね。ということは、何もなかった50msの経験は、あとから来るバネの反発の感覚によって上書きされて、ありもしないバネの感覚を感じてしまうということですね。あとから来る経験によって、ありもしない疑似経験が生み出されてしまう、これはまさにfalseメモリーの話と同じです。Ramachandranが好きな人の言葉で言えば、補填です。あとね、30msという数字の奇妙な一致というのもあるんだよね、うーーーんといういべきか、きゃぁーーーというべきか。

この話は時間と意識という、哲学、認識論の根源的な問題に入り込みます。リベットだよね。以前の記事で認知科学の汚点の一つとして、時間研究の欠如を述べましたが、こうした大西君の研究はここにダイレクトに関連するすごい話だと思いますね。是非応援したいです。


1件のコメント

  1. 大西 仁 より:

    紹介と激励ありがとうございます。なんか機は熟したと言うか、退くに退けなくなったと言うか… こうなったらシャカリキにやりますよ。

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