全国大学IT活用教育方法研究発表会

2007/2/7

ここにも何回か書いたが、2002年度から明治学院大学法務研究科の吉野先生を中心とした科研費(特別推進)のメンバーに加わって研究をしてきた。ここでの成果をタイトルにあるような学会で共同発表(むろん吉野先生が中心だが)したところ、昨年暮れに最優秀賞を頂いた。これについて短い文章を書いたので思い出とメモかたがた載せておく。


平成18年度全国大学IT活用教育方法研究発表会において,明治学院大学法務研究科吉野一教授を筆頭として,同加賀山茂教授,櫻井成一朗助教授,東京工業大学新田克己教授,私,そして東京大学太田勝造教授の連名で研究発表を行なった.この発表に対して,文部科学大臣賞(最優秀賞)が授与されることになった.

大会で発表したのは,「事例問題に基づく法律知識ベースおよび論争システムを活用した法創造教育」についてである.法的判断が法規範の単なる自動的適用ではないことを考えると,法創造はいわゆる立法に限られるわけではなく,一般の法律家の日常的な活動にも深く関係している.また司法制度改革審議会の答申は,法科大学院の法曹育成において創造的思考の重要性を強調している.

こうした創造的な法的思考を育成するために,我々は,アメリカのロースクールでよく用いられているプロブレムメソッドを軸にして,そこに法律知識ベース,論争支援システムという2つのITシステムを組み合わせた.こうした教育理念と方法によって,学生の創造的思考が促進されたことが様々な指標から明らかになった.また授業評価アンケートにおける学生の満足度も比較的高いものとなった.

この研究は,吉野教授を代表とする科学研究費補助金,特別推進研究の助成を受けて,2002年度から行なわれたものの集大成である.このプロジェクトは,さまざまな分野の研究者が参加していたことが特徴である.受賞論文の共著者だけとっても,法哲学,民法,法社会学,さらには人工知能研究者や,私のような認知科学者までも入っている.このプロジェクトの成功は,むろん吉野教授のリーダーシップや個性によるところが大きいが,こうしたメンバーの間の多様性も同様に重要であった.1つの考えを様々な側面から検討することが創造に対して持つ重要性を改めて認識した次第である.

また単に多様な分野の人が自分の研究領域の話をしただけではない.2002年度から1−2ヶ月に1回ずつミーティングを持ってきたのだが,ここでの議論の厳しさは体験したことがないほどであった.はじめて参加した人はおそらくけんかをしているのではないか思うくらい,激しい議論が毎度のごとく戦わされていた.自分の研究が目標との関連で厳しい評価を受けるということも,このプロジェクトの成功を支えた鍵として挙げられるだろう.

もう1つ忘れてはならないことは,ITに対するスタンスである.言うまでもないことだが,ITを活用するために教育を行なうわけではない.あくまで教育目標の実現の補助としてITを用いるのである.これは当然のことなのだが,IT,教育という文脈に身を置いてしまうとついつい忘れがちになってしまう.このプロジェクトでは,創造的思考とは何か,法律における創造とは何かについて,非常に多くの時間を割いて議論を重ねてきた.こうしたことが単に便利さを超えた,斬新なIT活用という評価につながったと信じている.

私個人としては,法学という未知の分野の人たちと5年にわたり交流をとおして,学問的に多くのものを得ることが出来た.この成果をまた自分の領域に持って帰り,新たな発展の種としたい.


法創造 ]

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